STORY 1 ラヴィプレシューズPGクリーム誕生
プロテオグリカン配合クリームの試作ができ上がってきて間もないころ、私・三浦は、青森県行政主催のある展示会に参加しました。まだそのときは名前すらもなく、小さなサンプル容器に入れられた試作品を、机の上に無造作に置いていました。「どうせ何の反響もないだろう…」と、少し投げやりな気持ちもありました。
ほんのちょっとの間、私が席を外しておりましたら、ある年配の女性が試作クリームの白い容器を振り上げ、「このクリーム、どこの会社のもの?」 と声高に叫ばれていたのでした。私は驚いて(何か粗相をしたのか?)と思いながら、「当方の企画したクリームです。何か?」と恐る恐るその女性に近づきました。女性は「このクリーム、凄くいい!私、毎日、津軽鉄道に乗って通勤してるんだけど、冬はとても乾燥して困っていたのよ。このクリームを塗ったらしっとりしてベタつかない。私にすぐにでも売ってちょうだい」
私はなかなか信じられず、ましてや試作品なので販売することはできなかったのですが、私はその女性の声から、冬場の乾燥が厳しい津軽の方々のお役に立てる自信を持ったのでした。
STORY 2 ロゴに込めた思い
私は「障がいをもつ方々の雇用を創出したい。雇用を生むためにも、“売れるもの” を企画したい」そのような思いからこの事業を始め、La Vie Precieuse(“大切な命” という意味)障がいがあってもなくても、同じ大切な命…このフランス語をブランド名に決めました。
といってはみたものの、最初から雇用を生むのは大変困難で、それでも「出来ることから始めよう。そうだ、地方では商品開発の機会はそれほど多く無いはずだ。実際にハンディキャップをもつ方に、デザインをお願いし、社会参加へのキッカケや励みにできないだろうか?」そう思い立ちました。
協力して下さったのは、NHKハート展入選実績を持つ、弘前市在住の18才(当時)の女性でした。右半身に不自由を抱える彼女は、約2時間、左腕だけでその身を筆一本で支えながら、La Vie Precieuseの墨文字を書き上げてくださいました。
そのときの彼女のがんばりと障がい者雇用への希望が、今のラヴィプレシューズのロゴ文字に込められています。
STORY 3 かわさきビジネスオーディションー銘品への道ー
ラヴィプレシューズPGクリームの内容とブランド名も決まり、「さて、どのようにこの新商品を打ち出していこうか…?」と考えておりましたところに、弘前大学の産学官連携コーディネーター様から、「あるビジネスオーディションがあるのだが、プロテオグリカン配合クリームで応募してみないかい?」とアドバイスをいただきました。それが、「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場(主催:公益財団法人 川崎市産業振興財団)」でした。
私が応募した第70回にして青森県企業としては初の参加ということで、張り切ってプレゼンし最終選考会まで残りました。
最終選考会では全精力を使ってプレゼンさせていただき、
・プロテオグリカンの素材性が素晴らしい
・PGクリーム自体の品質が高い
・障がい者のQ.O.L.向上を図ろうとする企画がいい
といった理由から、「かわさきビジネス・アイデアシーズ賞」を受賞致しました(平成23年3月5日)。こういった経緯から、PGクリームは “銘品” となりました。
弘前へ帰って早速プレスリリースを作成し、「これで記事を読んだ各方面から問い合わせがきて、ウヒヒヒ…」と思っていた矢先に、とんでもない悲劇が待ち受けていました。
STORY 4 プロテオグリカン美容テント in 弘前さくら祭り2011
“「かわさきビジネスオーディション」で青森県企業として初の受賞!” 私の頭の中で新聞記事の見出しまででき上がっていた2011年3月11日、未曾有の大災害・東日本大震災が発生しました(東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます)。
当然、私の受賞のニュースなど、どこかへ吹き飛んでいってしまいました。
しかし、PGクリームの製造ラインは動いてしまっています。「売らなければならない!しかし、どうやって?」私は悩みました。
「そうだ、弘前には何百万人も観光客が訪れるさくら祭りがあるではないか!そこでテントを出そう!!」そう思い立ちました。
周りで設営されている出店を見渡せば、ビール、焼きそば、焼き鳥、フランクフルト、綿あめ e.t.c…そんな中での前代未聞“プロテオグリカン美容テント”です。道行く人からは奇異な視線を送られ、しかも当時のプロテオグリカンの知名度は皆無に等しく、祭り期間中10,000回は「プロテオグリカン!」と叫びましたがほとんど無視されました。しかし、少しだけでも立ち止まって下さったお客様の片方の手に、PGクリームのテスターを塗らせていただくことに専念しました。もうそれしかアピールする方法はありませんでした。
すると驚いたことに、片方の手に塗らせていただいたお客樣方が、立ち去った数分後に「(塗らなかった)こっちの手にも塗って」と帰ってきてくださるのです。「ベタつかなくて伸びがいい」と、試作品時代にベタ褒めしてくれた津軽鉄道の女性の評価は本物だったのです!同じようなお客様は続出しました。
前代未聞のプロテオグリカン美容テント…雨に打たれ、風に吹かれ、私はぎっくり腰、妻は発熱、風評被害で観光客激減いろいろな試練に見舞われた激動の16Daysはこうして幕を閉じ、PGクリームは見事デビューを果たしたのでした。
STORY 5 プロテオグリカン知事
コラーゲン、ヒアルロン酸に続く第三の素材・プロテオグリカン。この青森発信の注目素材を、まずは地元の方々にお使いいただけるように、と心がけてきました。青森県や弘前市など行政で企画されたイベントにも積極的に参加するよう活動し、ブランド認知度が高まってきました。
こうして少しずつファンが増えてきたわけですが、実に強力なファンが誕生しました。“県民の代表”、三村申吾青森県知事その人です。普段から奥様、そして知事自らPGクリームをご購入いただいていたそうで、毎日ご愛用いただいているということでした。
ある日、夕方の青森ローカルニュース番組で、プロテオグリカンが特集されたときのこと。家族そろって夕食をとりながら視ていました。すると三村知事が登場し、オモムロにめがねを外されたのです。「知事は何をなさるのだろう?」と思って見ていますと、次の瞬間、何と!自らPGクリームをお顔に塗られたのです!家族全員、目が飛び出るほど驚きました!
「私も毎日塗っているんですよ!毎朝このクリームを塗って『よし!がんばろう!』と。」(三村知事・談)
この一件以来、PGクリームは通称「知事のクリーム」となり、認知度を急激にアップさせることになったのでした。
青森県の「産×学×官」が連携したプロテオグリカン活用プロジェクトは外部から高い評価を受け、2011年の農林水産大臣賞を受賞。2013年には「イノベーションネットアワード2013」にて、最高賞となる文部科学大臣賞の受賞を果たしました!
STORY 6 あゆみの箱
ラヴィプレシューズPGシリーズ商品の外箱には全て、「本商品の売上げの一部は、(公社) あゆみの箱様を通じ、障がいを持つ方々の生活支援に活用されます」と書かれています。当面は東日本大震災で被害に遭われた方々への支援に使っていただいております。
本連載 “ロゴに込めた思い”でも書きましたが、私は「障がいをもつ方々の雇用を創出したい。雇用を生むためにも、“売れるもの” を企画したい」そのような思いからこの事業を始め、La Vie Precieuse(大切な命という意味)障がいがあってもなくても、同じ大切な命…このフランス語をブランド名に決めました。
そうは言ってはみたものの、最初から雇用を生むのは大変困難で、それでも「できることから始めよう」ということで、支援団体への寄付を行っております。
支援団体には、公益社団法人・あゆみの箱様にお願いすることにしました。この商品の売上げの一部を寄付しようと決めたとき、思い浮かんだのが、子供のころに通った銭湯の番台に置かれていた「あゆみの木箱」でした。
市川顕事務局長様もわざわざ弘前へお越しくださり、激励のお言葉をいただきました。これからも支援を続けていく所存です。
STORY 7 基礎化粧ラインナップ完成
2012年3月にはラヴィプレシューズPGクリームの姉妹品といたしまして、洗顔石けん=ラヴィプレシューズPGフェイシャルソープをプロデュースする運びとなりました。
香料や保存料を使用せず、石けん素地と水しか使わない無添加石けんが有名な、長野県佐久市の㈲ねば塾様とコラボし、無添加石けんにプロテオグリカンとリンゴ果実エキスだけの配合にとどめた洗顔石けんを目指しました。
そして2012年6月には待望の化粧水、ラヴィプレシューズPGローションも完成!実は当初、化粧水の企画は予定がありませんでした。しかし、PGクリームのファンの方から「化粧水を作って欲しい」とのご要望があまりにも多く、企画が実現したのでした。2013年4月には、プロテオグリカン配合量を高めた短期集中ケア用の美容液「ラヴィプレシューズPGスキンエッセンス」を発表し、ますますアイテム数は充実しております。
名もなき白い容器入の試作品クリームは、ファンの方々の厚いご支援のおかげで《 洗う(石けん)→保湿する(ローション/スキンエッセンス)→仕上げ(クリーム)》の基礎化粧を、ついに同一ブランドでコンプリートするまでに至りました。
STORY 8 これからのラヴィプレシューズ/障がい者雇用実現へ向けて
2012年2月から、弘大GOGOファンド (第9号) の支援を賜り、化粧品素材としても活用可能な薬草植物 “甘草” の栽培研究に取り組んでいます。
共同研究事業スタート直後に東日本大震災に見舞われ、進捗に大幅な遅れが出ましたが、この春に苗たちが研究室から無事に屋外栽培試験地へ出て、現在まで順調な成長をみることができており、津軽での栽培方法をほぼ確立させられるまでになりました。
研究成果を積み重ね、将来きっと「ラヴィプレシューズ・ブランド」での津軽産甘草由来成分配合商品を発表したいと考えています。
他にも、実まで赤いリンゴ「紅の夢」由来成分の、化粧品分野への展開にも取り組んでおり、弘前大学の研究シーズを活用しながら、地方都市・弘前市ならではの取組みを続けたいと考えております。
そして、化粧品原料の栽培や成分抽出工程、商品の管理等を通じて、念願の目標である障がい者雇用の実現へ向けて、あゆみを進めていく所存です。
三浦 和英(Kazuhide Miura)
1973年生まれ。青森県つがる市 (旧木造町) 出身。社会福祉士。弘前大学人文学部卒業後、社会福祉法人立障害者支援施設勤務を経て、保育園施設長に。その後金沢工業大学院で修士課程を修了。2009年10月、株式会社ラビプレを設立。現在に至る。